榎本 陽祐
motumotuo
① 発表概要
「このまま実装を極めるか、マネジメントに専念するか」。30代から40代にかけて、エンジニアは常にこの二択の境界線で自身の未来を問い直されます。
私も20年のキャリアの中で、1人目のエンジニアや開発責任者を経験し、常に「この先生きのこる」ための最適解を探してきました。
辿り着いたのは、技術への情熱を維持したまま、エンジニアリング思考を「組織という巨大なシステム」に適用するDevHR(Developer's HR)という道です。
これは現場を退くことではなく、人や感情という不確定要素を含む組織をハックし、事業成長の蓋然性を高める「攻め」の転身です。
本セッションでは、私がなぜ40代でキャリアをDevHRに「Bet」したのか。
その背景にあった葛藤と、技術知見を組織運営に再投資することで見えてきた、40代以降のエンジニアが主体的に未来を切り拓くための生存戦略を共有します。
② 発表の詳細
「いまから、ここから」未来に向けてどうキャリアをアップデートすべきか、自身の体験に基づき詳述します。
40代で見つけた組織という未解決課題の存在
開発責任者として事業に向き合う中で痛感したのは、「事業成長を阻むボトルネックは、コードだけではなく組織にもある」という事実でした。
人が足りないことで生まれる機会損失や、逆に組織の肥大化がコミュニケーションコストを増大させる。
これまでのエンジニアとしての課題解決能力(型)を、この「最も難解なシステム課題」に適用することこそが、私にとっての新たな挑戦であり、キャリアのレバレッジになると感じた経緯をお話しします。
エンジニアリング思考を再定義し、組織へ応用する
DevHRへの転身は、技術を手離すことではありません。
そこには組織をエンジニアリングの対象として捉え、技術・経験をフル活用する道がありました。
例えば
・ オブザーバビリティ: 採用広報から内定承諾までを「デリバリーパイプライン」と捉え、各フェーズのコンバージョンを計測。勘と経験に頼らない組織改善のフローを構築する。
・ 自動化と最適化: AIやLLMを駆使し、採用オペレーションをハックして「世界一オペレーションエクセレンスを追求する組織」を構築する。
これらは、技術者としてのバックグラウンドがあってこそ可能な「HRを通じたエンジニアリング」の一つです。
「技術知見」という最強のドメイン知識を活かす
私が大切にしているのは、今もなお技術への興味を失わず、手を動かし続けることです。
DevHRの強みは、現場のエンジニアと同じ言語で話し、最新技術の動向や開発現場の「熱量」を正しく内外へ届けられることです。
技術スタックの多様化や、コミュニケーションコストの増大といった「成長痛」を予防・解決するには、技術への深い理解が不可欠です。
技術を捨てずに磨き続けることが、組織内外への「誠意」となり、組織のブランディングにおける最強の武器にもなるのです。
未来への再投資を通じた生存戦略の提示
これらを踏まえ、開発経験を「過去の遺産」として守るのではなく、HRという新たなフィールドに「再投資」することで、自らの市場価値を再定義します。
技術を諦めるような消極的な選択ではなく、技術を武器にして「事業を自ら動かすエンジン」へと自己をアップデートする新たな生存戦略を提案します。
③ 想定する聴衆とその人たちが得られるもの
【想定する聴衆】
・自身の強みを活かす「次の10年」を模索し、キャリアに迷いを感じているシニアエンジニア・EM
・技術は好きだが、採用や組織の課題にも興味があり、技術を捨てずに新たなキャリアを模索しているエンジニア
【得られるもの】
・DevHRという職種を通じた「技術力×組織力」という掛け算が、個人のキャリアといかに強固に結びつき、事業を加速させるかという希望と可能性の提示
・ソフトウェアの外にある課題をエンジニアリングによって解決可能な問題として捉え、論理的に解決するためのマインドセット。
④ なぜあなたがこのトピックについて話すのか
私は20年間、技術の最前線で「何を作るか」に向き合ってきました。
開発責任者として組織の成長痛を経験する中で、組織の在り方が事業の成否を分ける要素だとも感じています。
2025年末、私はその確信を形にするため、あえて1人目のDevHRとして自らのキャリアを大きくBetしました。
今まさに、技術者の視点で「組織というプロダクト」を磨き上げ、事業成長を加速させる手応えを感じています。
この「いまから、ここから」始まる挑戦の記録を共有することで、同じようにキャリアの岐路に立つ仲間たちに、技術を捨てずに生き残るための「新たな羅針盤」を提供したいと考えています。