エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス2026
通常セッション(20分)

40代エンジニアに訪れる「中年期の危機」からきのこるために

sawad_wsd さわでぃー sawad_wsd
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①発表概要
「今はトップランナーを走っているが、自分のスキルはいつ陳腐化するのか。」
私は、Web業界に約四半世紀在籍する中で、私自身も含め様々な40代前後で発生する不調を見てきました。
この経験が問題意識となり、大学院に進学し修士論文として「新興産業における中年期の危機と克服プロセス」を研究しました。
約10名への質的調査とM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)による分析によって、4段階で訪れる危機のプロセスが明らかになりました。
さらに技術陳腐化が早い業界では、この危機が短期間で繰り返されることが明らかになりました。
本セッションでは、それらの危機についての詳細と、その乗り越え方についてキャリアに引きつけて共有し、エンジニアが「この先生きのこる」ための実践的な知見としてお伝えします。

②発表の詳細
本セッションでは、まず研究の前提となる業界構造の話から始めます。1990年代後半からの劇的に変化した技術環境や、組織構造的な問題、そしてロールモデルの不在。これらは多くのエンジニアが在職する領域に共通する課題です。まずここから説明します。
次に、インタビューから見えた中年期の危機の実態を紹介します。研究からは、技術の陳腐化・キャリアパスの不透明さ・役割の不明確化という3つの危機要因が明らかになりました。インタビューを通じて見えてきた「技術の更新」だけでなく「役割の再定義」を通じた危機を乗り越えるヒントをお話しします。
そして分析から導かれた4段階の克服プロセスを共有します。「潜在的危機期→危機顕在化期→再構築準備期→再構築期」というプロセスの中で、特に「再構築準備期」には特徴的な「なべ底」状の停滞期間が存在し、この時期に新技術の習得や役割の模索が集中的に行われることがわかりました。この停滞は後退ではなく、次のステージへの準備期間です。
最後に、危機克服を支える二重の支援構造について述べます。組織による面談や配置転換などの直接支援と、勉強会・カンファレンス・オンラインコミュニティなどの実践コミュニティ(コミュニティ・オブ・プラクティス)への参加が、相互に補完しながら危機克服を促進していました。まさに「きのこカンファレンス」のような場が、エンジニアのアイデンティティ再構築に重要な役割を果たしているのです。
20代・30代の参加者には「中年期に訪れる危機の正体と備え方」を、40代以上の参加者には「今まさに経験している困難の構造的理解と、そこからの道筋」を持ち帰っていただくことを目指します。

③想定する聴衆とその人たちが得られるもの
想定する聴衆
・40代以上のエンジニアで、技術変化やキャリアの先行きに漠然とした不安を感じている方
・20〜30代のエンジニアで、将来のキャリアについて考え始めている方
・チームリーダーやマネージャーで、中堅・ベテランメンバーの支援に課題を感じている方

得られるもの※例
・中年期に訪れるアイデンティティ危機の構造的理解(「自分だけの問題ではない」という安心感)
・危機克服の4段階プロセスという見取り図(今自分がどの段階にいるかの自己認識)
・実践コミュニティの参加が危機克服に有効であるという研究的裏付け
・組織として中堅・ベテランを支援するための方向性

④なぜあなたがこのトピックについて話すのか
私はWeb業界で25年、エンジニアとともに制作現場を歩んできました(私自身は非エンジニアです)。新卒は別業界でしたが2社目のSIer企業を経て、現在は制作会社の代表として、デジタル化支援に舵を切る中でエンジニア組織のマネジメントに日々向き合っています。
40歳の頃、自分自身が深刻なアイデンティティの危機に直面しました。急速な技術変化、ロールモデルの不在、プライベートの変化が重なり、「自分はこの先何者なのか」がわからなくなったのです。
この当事者経験を出発点に、研究に取り組み、2025年3月に修士課程を修了しました。「個人的な苦悩」だと思っていたものが、実は「新興産業に共通する構造的課題」であったことを研究で明らかにできたことは、大きな発見でした。
まさに本カンファレンスのテーマ「FUTURE 〜いまから、ここから〜」に重なる、修士課程で得た知見を、当事者・経営者・研究者という3つの視点からお伝えできると考えています。