エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス2026
通常セッション(20分)

エンジニア評価を「デバッグ」する — 35,000の定義で不確実性を排除し、キャリアを可視化する生存戦略

nohhoshi ノンビン nohhoshi

■発表概要
エンジニアにとって「評価」は、「主観的で不透明なブラックボックス」になりがちです。これが個人の成長を妨げ、組織への不信感を生むバグとなります。
本セッションでは、評価者の感情を徹底的に排除し、エンジニアが納得せざるを得ない「35,000通りの定義」による合理的評価システムを公開します。
7カテゴリ・100項目のコンピテンシーを5段階で定義し、70以上のロール(職種)ごとに最適化したこの仕組みは、単なる査定ツールではありません。
自分の現在地を正確にサンプリングし、バックエンドからテックリードまで、目指すべきキャリアへの最短経路を導き出す「キャリアの仕様書」です。
若手からベテランまでが、不満ではなく技術研鑽に没頭できる環境をいかに実装したか。
その設計思想と運用から得られた知見を共有し、変化の激しい時代をエンジニアが生きのこるための「共通言語」としての評価の在り方を提案します。

■発表の詳細
本セッションでは、組織のOSとも言える「評価制度」をエンジニアリングの視点で再構築した事例を深掘りします。

  1. 評価制度における「主観」という技術負債
     多くの組織では、評価者の印象や声の大きさに左右される「主観評価」が横行しています。これはエンジニアにとって予測不能なシステムであり、心理的安全性を著しく毀損します。この不確実性を排除するために、我々がどのように「評価の標準化」を試みたかを解説します。

  2. 35,000パラメータの設計:コンピテンシーマトリックスの実装
     評価の核となるのは、7つのカテゴリに分類された約100項目の評価ポイントです。
      ・各項目にレベル1から5の達成基準を明文化。
      ・バックエンド、フロントエンド、SRE、テックリードなど、70を超えるロールごとに「期待値」を設定。
      ・結果として、「100項目 × 5レベル × 70ロール = 35,000通り」の解像度でキャリアを定義しました。
      これにより、どの技術を伸ばせば等級が上がるのか、ロール転換時に何が足りないのかが、コードの静的解析のように一目で判別可能になりました。

  3. 3軸による多角的なサンプリング 等級だけでなく、以下の3軸を数値化して評価を構成しています。
      ・スキル評価: マトリックスに基づく「実力」の証明。
      ・人事評価: 成果だけでなく「行動量」を可視化し、プロセスを評価。
      ・理念実践度: 抽象的な「会社理念」を具体的な行動へデコードし、定量化。
      これらを組み合わせることで、特定の個人への依存や感情を排した「アルゴリズムによる評価」に近い運用を実現しています。

  4. 運用結果:ベテランと若手が共存する「生存戦略」
     この極めてロジカルな仕組みがもたらしたのは、意外にも「温かい納得感」でした。
      ・ベテラン層: 自身の経験がどの項目に該当するかが明確になり、後進への技術伝承が「評価対象」として可視化された。
      ・若手層: 35,000の定義が「成長のロードマップ」となり、迷いなく学習に投資できるようになった。 本パートでは、実際に不平不満が消え、組織満足度が向上したデータについても触れます。

想定する聴衆とその人たちが得られるもの
【想定する聴衆】
 ・今の評価に納得がいかず、自分の価値をどう証明すべきか悩んでいるエンジニア
 ・次に何を学ぶべきか、キャリアの迷路に立ち止まっている方
 ・主観的な評価から脱却し、エンジニアが誇りを持てる組織を作りたいリーダー・マネージャー
【得られるもの】
 ・自分のキャリアを「項目」と「レベル」で客観的に分析する視点
 ・エンジニア特有の「納得感」を生み出すための、具体的な評価項目設計のフレームワーク
 ・70以上のロールを定義するための、多様なキャリアパスの考え方

なぜこのトピックについて話したいのか
エンジニアが一生エンジニアとして「生きのこる」ためには、市場価値と組織評価が正しく同期している必要があります。しかし、多くの現場では評価基準が曖昧なために、優秀なエンジニアが疲弊し、去っていく姿を見てきました。 私は、評価を「政治」ではなく「エンジニアリング」の対象にしたいと考えています。35,000もの定義を愚直に作り込み、運用してきた経験は、必ずや現場で戦うエンジニアたちの救いになると確信しています。 「評価制度が変われば、エンジニアの生き方はもっと自由で、もっと強くなる」ということを、実体験に基づいたロジックを伝え、一人でも多くのエンジニアに笑顔でエンジニアリングをしてもらえるきっかけになれればと思っています。