エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス2026
通常セッション(20分)

25年前、ゲーム開発者だった私が「ITエンジニア」へ転身した話 —— C++からPerl/PHPへ、混沌を生き抜いた生存戦略

sapi_kawahara 川原 英明 sapi_kawahara

発表概要
2001年、PlayStation 2全盛期。私はC++とアセンブラでハードウェアの限界に挑むゲーム開発者でした。しかし、ブロードバンドの普及とともに「Web」が世界を変えようとしていたその時、私は一つの決断を下しました。閉じたハードウェアの世界を離れ、PerlとPHPが支配するWebシステム開発の世界へ飛び込むことでした。

本発表では、メモリ管理とポインタ演算が全ての「硬い開発」から、テキスト処理の王様であるPerlと、爆発的に普及し始めていたPHPという「柔らかい(そして緩い)開発」へ移行した際の強烈なカルチャーショックについてお話しします。そして25年経った今、あの時学んだ「Webの基礎(LAMP)」とスクリプト言語特有の柔軟性が、現代のクラウド時代にどう活きているのか、技術の変遷を超えたエンジニアの生存戦略を共有します。

発表の詳細
本セッションでは、25年前のWeb黎明期の空気を振り返りつつ、ゲーム開発とWeb開発の狭間で見た景色をお話しします。

  1. 25年前の決断:ハードウェア職人から、LAMPの住人へ 当時は「IT革命」という言葉が踊り、iモードが社会現象化していました。ゲーム開発現場ではC++による厳密なメモリ管理と、終わりのないデバッグの日々。 「このまま特定のハードウェア心中していいのか?」という危機感から、私は当時Webのバックエンドを支えていたPerl、そして新星のごとく現れたPHPの世界へジョブチェンジしました。

  2. 黎明期IT業界への適応:型のない世界への戸惑い 転職先は、Linux、Apache、MySQL、そしてPerl/PHPで構成された、いわゆる「LAMP環境」でした。

「型」がない恐怖と快感: C++出身の私にとって、変数の型宣言がなく、いきなり使えてしまうPerlやPHPは「無法地帯」に見えました。「コンパイルエラーが出ない=実行するまでバグが分からない」という恐怖。しかし、慣れてくると「書いてすぐ動く」という圧倒的な開発スピード(PDCAサイクルの速さ)に魅了されました。

Perlの魔術とPHPの実用主義: テキスト処理やバッチ処理ではPerlの正規表現が火を噴き、Web画面構築ではHTMLに直接ロジックを書けるPHPの生産性が革命的でした。

スパゲッティコードとの戦い: 一方で、当時のPHPやPerlはフレームワークも未成熟。「コピー&ペースト」や「巨大なif文」が乱立する現場で、ゲーム開発で培った「構造化」のスキルをどう適用するか、泥臭い戦いがありました。

  1. 伏線回収:25年間の生存戦略の答え 当時「所詮はスクリプト」と揶揄されることもあったPerlとPHPですが、この経験がその後のキャリアの土台となりました。

言語の壁を越える: C++(静的)とPerl/PHP(動的)の両極端を知ったことで、その後登場したPython、Ruby、Goなど、どんな言語が来ても「どちらかの系譜」として理解できるようになりました。

「厳密さ」と「柔軟さ」。
この両方の武器を持てたことが、四半世紀生き残れた最大の要因です。

想定する聴衆とその人たちが得られるもの
想定する聴衆
・昔からWeb業界にいて、PerlのCGIやPHPのレガシーコードと戦ってきた歴戦のエンジニア
・最新のモダンなフレームワークしか知らないが、Web技術のルーツや「生のHTTP/HTML」を扱う感覚を知りたい若手層
・jQueryはJavaScriptを楽にする魔法だよ

得られるもの
・技術の温故知新: Perl/PHPの黎明期を知ることで、なぜ今のフレームワークがこういう設計になっているのか(MVCの必然性など)が腑に落ちる
・適応力の実例: 異なるパラダイム(コンパイル言語 vs スクリプト言語)への移行プロセスと、そこから得られる複眼的な視点
・キャリアの自信: 「流行りの技術」が変わっても、「Webの仕組み」と「プログラミングの基礎」さえあれば25年戦えるという確信

なぜこのトピックについて話したいのか?
25年前、PerlとPHPは「Webを民主化」しました。誰でもメモ帳一つで動的なサイトが作れる——その敷居の低さが、現在のWebサービスの爆発的な発展の原点です。

PerlやPHPが教えてくれた「多少汚くても、動いて価値を出すものが偉い」というプラグマティズム(実用主義)に救われました。 「あの頃のコードはひどかった」と笑い話にしつつも、そのカオスの中から現代のWeb技術体系が生まれたことを伝えたい。 変化の激しい時代における最強の生存戦略であることを、迷えるエンジニアたちにメッセージとして届けたいと思います。