エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス2026
通常セッション(20分)

興味と形が変わるだけで、やっていることは同じだったかも ── 25年エンジニアの生きのこり方

teru_kusu 楠 輝彦 teru_kusu
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発表概要(400字程度)

ガラケーアプリ、スマホゲーム、Webアプリ、そしてプレイヤーからPM・マネージャーへ。25年のキャリアで技術もポジションも大きく変わりました。しかし振り返ると、私がやってきたことの本質は「システムを考えて実装する」であり、それは一度も変わっていません。変わったのは、具体化するときに必要な知識の領域だけでした。

ただし「CPUと人間は違う」。オブジェクト指向の最小知識の原則をチーム運営に持ち込んで組織を壊しかけたり、PM失敗やFXの大損で心が体に影響したことが、人間の心理への興味を開き、組織開発という新たな領域につながりました。

必要に迫られて知識を得る。知識を得たから新しい景色が見える。この循環を25年回し続けた結果、私は「生きのこる方法」ではなく「形が変わっていくエンジニアリングを楽しめるかどうか」が本質だと考えるに至りました。

発表詳細(1000字程度)

本セッションでは、エンジニア歴25年・47歳の私が経験した技術変遷とキャリア変化を通じて、「生きのこる」ことの本質を考えます。

1. ずっと同じことをしている

ガラケーのツールやミニゲーム開発に始まり、スマホゲーム、WebアプリのFE/BE/インフラと、扱う技術は次々に変わりました。しかし、どの時代も「システムを考えて実装する」という行為は同じでした。具体化に必要な知識領域が変わるだけで、その知識への興味は具体化しようとした時に自然と湧いてくるものでした。

2. でもCPUと人間は違った

開発リーダー、PMとキャリアが進む中で、ソフトウェア設計の原則を人間の組織にそのまま適用する過ちを犯しました。たとえばオブジェクト指向の「最小知識の原則(デメテルの法則)」をチーム間コミュニケーションに適用した結果、各チームが最小限のアウトプットだけを出す「社内外注」状態に陥り、対立が生まれました。システム思考は万能ではなく、対象が変われば「正解」も変わるという当たり前のことを、痛みをもって学びました。

3. 壊れたから見えた景色

PM時代の失敗に加え、プライベートでのFX大損という出来事が転機になりました。精神的ショックが頭痛・目眩・発汗・不眠といった身体症状として現れ、「人間の心はこんなに身体に影響するのか」と衝撃を受けました。この体験から人間の心理に強い興味が湧き、それが後に組織開発・チームビルディングへの関心につながっていきました。まさに「知識を得たから新しい景色が見えて、興味が湧く」循環の実例です。

4. 形が変わるエンジニアリングを楽しめるか

25年を振り返って思うのは、「生きのこる方法」というハウツーは存在しないということです。技術は変わる。ポジションも変わる。でも「システムを考えて実装する」という軸は変わらず、具体的な知識は必要になった時についてくる。AI時代の今もそれは同じです。「いまから、ここから」新しい知識領域に踏み出せばいい。25年間それを繰り返してきた実感があります。結局のところ、形が変わっていくエンジニアリングそのものを楽しめるかどうか。それが、この先も生きのこるための唯一の本質ではないかと考えています。

想定聴衆と得られるもの

想定聴衆: キャリアの方向性に迷っているエンジニア、技術変化やマネジメントへの転身に不安を感じている方、「自分はこの先やっていけるのか」と漠然とした不安を抱えている方。

得られるもの: 「特別な戦略がなくても生きのこれる」という安心感と、技術・ポジションが変わっても不変の軸があるという視点。また、ソフトウェア設計原則を人間組織に適用する際の具体的な落とし穴と、予期しない経験が新たなキャリアを開くという実例。

話す理由

ガラケー時代からエンジニアとして働き、プラットフォームの世代交代を複数回経験してきました。その中で技術選択やキャリアの分岐点で悩んだことも、失敗して痛い思いをしたことも多々あります。しかし振り返ると、そのすべてが「形が変わるエンジニアリングを楽しむ」という一本の線でつながっていました。この実感を、同じように不安を感じている方に共有したいと思い、応募します。