エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス2026
通常セッション(20分)

役割はPdM、心はエンジニア。AIと設計力を武器に「現場へ還る」螺旋型キャリアの生存戦略

ingktks7 稲垣剛之 ingktks7
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【発表概要】
「エンジニアを辞めてマネジメントに行く」それは片道切符だと思っていませんか? 私は現在、PdMやデザイナー組織のマネージャーを務めています。名刺上の役割は変わりましたが、アイデンティティは「ずっとエンジニア」であり、軸は一貫して「プロダクトづくり」にあります。

本セッションでは、前半15年のエンジニア経験(設計・アーキテクト視点)がいかにして現在のマネジメント領域で活きているか、そしてAIの台頭によって、なぜ今「再びエンジニアに戻る」という選択肢が現実的になっているのかをお話しします。

役割という「枠」に囚われず、技術とビジネスの間を自由に行き来し、経験を積み重ねて元の場所へより高い視座で戻ってくる。そんな「螺旋(らせん)型キャリア」こそが、境界が融解するAI時代の生存戦略です。エンジニアの「心」を持ち続けるすべての人へ、未来への希望となる「あり方」を提案します。

【発表の詳細】
はじめに:「名刺」は変わっても、「心」は変えなくていい
「名刺の上では部長、頭の中ではPdM。でも、心の中ではエンジニアです」。任天堂・岩田元社長の言葉に共感する人は多いはずです。私もその一人です。コードを書く業務から離れ、PdMやデザイナーの組織を見るようになった今でも、私の判断基準の根底にあるのはエンジニアリング思考です。この「エンジニアマインド」こそが、不確実な時代の最大の武器です。

■セッションの構成

  1. 武器の再定義:実装力ではなく「設計力」で戦った15年 私のキャリアの前半は、超人的なコーディング速度で勝負するタイプではありませんでした。
    むしろ、全体俯瞰的な「設計力」、複雑さを整理する「アーキテクト視点」、そしてチームを動かす「リーダーシップ」が強みでした。当時は「手を動かさないこと」への葛藤もありましたが、結果としてこのスキルセットが、後のPdM業務や組織マネジメントにおいて「エンジニアリングの勘所がわかるマネージャー」という強力な差別化要因となりました。

  2. 越境するキャリア:職能の「融解」を楽しむ 現在、私は非エンジニア職(PdM/デザイナー)のマネジメントをしています。
    ここで気づいたのは「組織づくりもプロダクト開発と同じ」という事実です。要件定義し、負債を解消し、スケーラビリティを確保する。対象がコードから人・組織に変わっただけで、エンジニアリングの思考法はどこへ行っても通用します。「技術職を離れること」は、スキルの喪失ではなく「適応領域の拡大」だったのです。

  3. 螺旋的未来:AIと共に「エンジニア」へ還る (FUTURE) そして今、生成AIの登場により、キャリアは再び面白くなっています。
    コーディングのハードルが下がったことで、私が得意としてきた「設計・アーキテクト」の能力があれば、実装力(腕力)の衰えを補って余りあるパフォーマンスが出せる時代が来ました。「マネジメントの視座」と「最新技術」を携えて、再び現場に戻る。それは後退ではなく、螺旋階段を登るように、より高い視点を持って元の場所に戻ってくる行為です。 AIを前提とした時代、エンジニアのキャリアは「一直線の道」から「自由な往復運動」へと変わります。「いまから、ここから」どう生きのこるか、その具体的な戦略をお話しします。

【想定する聴衆】
・すでにEMやPdMとして活動しているが、技術から離れることに不安や寂しさを感じている方
・「コードを書かなくなったらエンジニアとして終わり」という恐怖心がある20代~30代
・自身のキャリア設計、あるいはメンバーのキャリア支援に悩みを感じている中堅~シニア層

【得られるもの】
・職種名(ロール)に縛られず、自分の「強みの軸(設計力など)」でキャリアを構築する視点
・マネジメントやビジネス領域へ越境することのメリットと、そこから技術職へ戻る際のアドバンテージ
・AI時代の到来を「若手との競争」ではなく「ベテランの復権」と捉えるポジティブなマインドセット

【なぜこのトピックについて話したいのか】
私自身、キャリアの途中で「エンジニアであり続けたい」という想いと「マネジメントへの期待」の間で葛藤した経験があります。しかし、役割(ロール)と心(アイデンティティ)を分けて考え、さらにAIという新しい武器を手に入れたことで、その葛藤は「自由」に変わりました。 「エンジニアは35歳で定年」「マネージャーになったら技術は捨てる」。そんな古い常識を壊し、私たちは何歳になっても、どんな役割についても「エンジニア」であり続けられる。その楽しさと生存戦略を共有し、未来を前向きに捉えるきっかけを作りたいと願っています。