Kohei Kadowaki (kadoppe)
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「ソフトウェア開発かマネジメントか」は、多くのエンジニアが直面する問いです。僕は30代後半でVPoEを経験し、組織として大きなインパクトを生むやりがいはあったものの、大好きなモノづくりに費やす時間が減り、仕事への熱が消え、夢中に働けなくなっていきました。コーチングを通じて、開発に夢中でいたい自分と、個人の可能性を最大化する組織づくりやマネジメントに責任を持ちたい自分、両方がいることに気づきました。どちらかを選ぶのではなく、両方に没頭すると決めました。
本トークでは、41歳でアーリーステージのスタートアップに入社しプロダクト開発に没頭した10ヶ月間と、顧客に価値が届き始めたタイミングで再びVPoEの役割を持つことになった現在の挑戦をお話しします。前回とはまるで違うアプローチで臨むVPoEへの再チャレンジ。「a or b」ではなく「a and b」で両方に没頭し続ける、現在進行形の話です。
30代後半、以前の働いていた会社でVPoEとして組織マネジメントに向き合っていた時期があります。幼い頃からコンピューターやゲームが好きで、それが高じてエンジニアになりました。組織を通じて大きなインパクトを届けるやりがいはありました。ただ、自分で手を動かす時間がどんどん減っていき、やりがいはあるのに仕事への熱が消えて、夢中に働けなくなっていました。
転職を考え始めた頃にコーチングを受けました。コーチとの対話の中で、自分の中に「ソフトウェア開発に夢中でいたい自分」と「個人の可能性を信じてポテンシャルを最大化する組織づくりやマネジメントに責任を持ちたい自分」がいることに気づきました。どちらかを選ぶ必要はなくて、両方に没頭する道を探そうと決めました。
41歳でアーリーステージのスタートアップに入社して、エンジニアとして第一線に立ちました。自分でアーキテクチャを設計し、プロトタイプを作り、コードをたくさん書きました。夜なべして作ったプロトタイプを顧客先でデモすると、人生で一番コンセプトが「刺さった」感覚になりました。今すぐ帰って作り始めたいという衝動が生まれ、それが尽きることなく、10ヶ月かけてプロダクトが顧客に届き価値を発揮し始めるまでを、チームで駆け抜けることができました。
プロダクトの初期リリースが無事完了し、顧客に価値が届き始めたタイミングで、再びVPoEの役割を持つことになりました。以前と同じ肩書きですが、アプローチはまるで違います。全メンバーの前で話したのは「組織を作ろう」ではなく、10ヶ月間のプロダクト立ち上げ期に自分が体験した「プロダクトが生まれて顧客に届くストーリー」を、一緒に働く人たち全員が何度も体験できる環境を作りたい。一人ひとりの可能性を信じて、その力を最大限に引き出す。その結果として良いプロダクトがどんどん生まれてくる。そういう状態が同時多発的に起きまくる組織にしたい。手を動かしてきた原体験があるからこそ、この話を自分の言葉で語ることができました。
以前のVPoE時代から一緒に働いている同僚に「前と比べてすごく楽しそうに仕事してるね、でもまた辛くなるんじゃない?」と心配されました。でも今は胸を張って「大丈夫」と言えます。原体験を自分の手でやれたこと、優秀な仲間と一緒にやれていること、そして過去の自分を助けられる事業とプロダクトを自分たちの手で作っていること。それが自信になっています。まだ道半ばですが、そのリアルをお伝えできればと思います。
マネジメントに進んだけれど技術への情熱が薄れてきたと感じているエンジニアの方、ソフトウェア開発とマネジメントのあいだでキャリアに悩んでいるエンジニアの方、自分が本来好きだったことを見失いかけている方に届けたいです。
二項対立ではなく「両方に没頭する」という選択肢があること、そのために自分自身と向き合うプロセスの具体例、そして手を動かす現場に戻り原体験を積み直すことが次のキャリアにどうつながるのか、リアルな実例をお持ち帰りいただけると思います。
かつての僕と同じように「ソフトウェア開発かマネジメントか」で悩んでいる人に、両方取っていいと伝えたいからです。自分の可能性をもっと広げてほしい。夢中に没頭して働ける人を少しでも増やしたい。一度VPoEとして熱を失い、コーチングで自分と向き合い、エンジニアとして現場に戻り、再びVPoEに挑戦している今だからこそ、そのリアルを届けられると思っています。