伊藤いづみ
izumii19
①発表概要(400字程度)
「水を運ぶ人」という言葉があります。サッカー日本代表監督だったオシム氏が献身的に走ってパスをつなぐような「目立たないけれどチームを支えている選手」を称えて使った表現です。
私は今チームのリーダーをしていますが、自分は率先して得点を決めるような目立つポジションでもなければ、これだけは絶対に負けないという尖った強みをもっているスター選手でもありません。
そんな自分のリーダーとしてのスタイルが「水を運ぶ人」でした。
優秀なメンバーが活躍するには、裏で潤滑油となり支える役割が必要です。本セッションでは、目立たないリーダーシップの価値と、「得意なことがない」と感じる人が担える尊い役割についてお話しします。
②発表の詳細(1000字程度)
本発表では、「年齢のわりに得意なことがない」と感じている人が、それをコンプレックスではなく、ひとつのリーダーシップスタイルとしてどうチームに貢献できるのかをオシム監督の「水を運ぶ人」という言葉を軸に考えます。
【リーダー像への違和感】
チームで目立つのは「先頭に立って引っ張る人」「点を決める人」のような華々しい存在であり、「リーダー」と聞くとこのような人物像が想起されます。
自分はこういうタイプではなく、「得意なことを見つけましょう」と言われるたびに違和感を感じていました。
【「水を運ぶ人」という言葉との出会い】
転機となったのが、オシム監督の言葉「水を運ぶ人」でした。
(自分は「サッカー全くわからん勢」で、むしろこの言葉をきっかけにオシム監督の存在を知ったようなものです。)
もともとは戦時下で命を守るために働く尊い人を指す言葉ですが、オシム監督は「目立たないが献身的にチームを支える人」への称賛としてこの言葉を使っていました。
花形選手でなくてもチームに貢献できることがあり、それが実はチームをチームたらしめるために重要であるということに気づきました
【自分が目指したリーダーシップ】
「自分が点を決めるのではなく、点を決められる状態をつくる」
「調整、支援、裏方、地味な仕事を引き受けることでチームを前に進める」
現在チームのリーダーを務める中で、私は「水を運ぶ人」のようなリーダー像を目指すようになりました。
優秀な人だけを集めたチームが最強なのではなく、潤滑油という「つなぐ存在」があることでチームは力を発揮できるものだと気づきました。
つなぐ存在として自分が磨いたスキルは観察力、傾聴力、対話力、そして地味な作業を楽しむ力です。
【「得意なことがない」人にこそある役割】
最後に、「得意なことがない」と感じる人へのメッセージを提示します。
尖った強みがない=価値がない、ではありません。全員がスターである必要はないのです。
そして水を運ぶことは立派な才能です。それは地味ですが尊いリーダーシップだと思います。
自分と同じように感じている人がいるのであれば、支えるリーダーシップを磨いてみてはどうでしょう。
この発表を通じて、目立つリーダー像に馴染めない人が、「水を運ぶ人」としての役割を肯定し、自分なりのリーダーシップを見つけるきっかけになれば幸いです。
③想定する聴衆とその人たちが得られるもの
想定する聴衆
・年齢の割に自分には強みがないと感じている人
・組織やコミュニティの「支える役割」に関心がある人
得られるもの
・個人ではなくチームで成果を出していくリーダーシップ
・「得意なことがない」ことを肯定的にとらえる観点
・「水を運ぶ」ために必要なスキル
④なぜあなたがこのトピックについて話すのか
40歳を越えるとリーダーやマネージャーという役職につくことが多くなりますが、同時に「得意なことを身につけるとよいですよ」「あなたの強みはなんですか」ということを問われることが多くありました。自分はこの質問を受けるたびに違和感を感じていました。
同時に得意なことがこれだと言えない自分、強みをアピールできない自分がダメなように感じることがありました。
しかしリーダーシップにもいろんなスタイルがあること、活躍するべき人が存分に力を発揮できるよう裏で水を運び続けるような目立たない活動が、自分の得意領域だということに気づきました。
同じように「得意なことがない」と感じる人へ「水を運ぶ人」という言葉に救われ、このリーダーシップを実践してきた当事者としての経験を伝えたいと思います