アニメ『ブルーピリオド』の主人公・矢口八虎は、早朝の渋谷の青さを描き、それが他者に理解されたことで「絵を描く悦び」に目覚めます。また、鮎川龍二と“同じ海に飛び込んで対話する”ために、芸大二次試験直前という大事な時期に、冬の小田原の海へと向かいます。そこで二人はセルフヌードを通して、それぞれの本音をさらけ出しました。
人間とは、多面的であり、多層的な個性を持った存在です。常に周囲に合わせて要領よく立ち回ってきた矢口八虎という青年が、「あなたが青く見えるなら、りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」という作中のセリフに象徴されるように、自分自身の「青」を肯定し、それを描き出したとき、初めて本当の意味で自己を他者に開示します。
「青い渋谷」を描くことは、彼自身のその後の生き方を決定づけた行為でした。そして、鮎川龍二をはじめとする他者という「世界」との接触に正面から身を投じることで、自己を覚知していきます。
矢口八虎の生き方から得た学びとして、他者と真摯な対話をするための自己開示、その対話によって得られる自己覚知の尊さについてお話しします。