SREエンジニアがトレーシング導入で経営陣を納得させるまで 〜可観測性向上をビジネス価値に翻訳する実践ガイド〜 by Banri Kakehi

SRE Kaigi 2026
セッション(30分)

SREエンジニアがトレーシング導入で経営陣を納得させるまで 〜可観測性向上をビジネス価値に翻訳する実践ガイド〜

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■ 発表カテゴリ

Tech: SREを支える具体的な技術や手法

■ 発表概要(400字程度)

「SLI/SLOは設定したが、運用に活かしきれていない。」「可観測性の重要性は理解しているが、経営陣にそのビジネス価値を説明できない。」—— そんな悩みを抱えるSREエンジニアは多いのではないでしょうか?

SREのミッションは、SLOを満たしながら開発速度と運用効率を高めることです。
我々は、運用効率向上には可観測性の最適化が最も効果的であると考えます。

一方で、ログやメトリクスの収集はしているが、その活用や、トレースの収集・活用は、個人の検証止まりでプロダクションへの導入に至っていないケースが少なくないと思います。
これらの根本原因は主に、①可観測性がもたらす具体的なビジネスインパクトを定量化できていない ②トレーシングが可観測性にどれほど貢献するかの見積もりができていない ③社内規約やコストが足かせになっている、であると考えています。

本セッションでは、SREエンジニアとして社内でトレーシング導入を検討している実例を基に、可観測性の向上を明確なビジネス価値へと結びつけるための実践的なアプローチをご紹介します。

■ 発表の詳細(1000字程度)

本セッションでは、可観測性向上をビジネス価値につなげる具体的な手法について、弊社のサービスとそのシステムを例に、5つのステップに分けてお話しします。

1: 現状の可観測性を把握する
まずは、可観測性を構成する3つの要素(ログ、メトリクス、トレース)のうち、今運用しているシステムで収集している要素、活用している要素を把握することが重要だと考えます。
また、トレーシングがどれだけそのシステムの可観測性に貢献できそうなのかを見積もることも重要です。
このステップでは、ステップ2以降に必要なこれらの内容を確認します。

2: ビジネスケースとしてあるべき形・効果を定義する
サービスに対してトレーシングは必須ではありませんが、サービスを提供するシステムが複雑している昨において、適切に考慮することで、ビジネスへの貢献が期待できると考えています。
このステップでは、ビジネス的な観点からトレーシングのあるべき姿を考えてみます。

3: コストに向き合う
コストは、計装方法やプロジェクトの成熟度合い、サンプリング戦略に大きく依存し、これらによって採算がとれるかが変わります。
このステップでは、初期コスト・ランニングコストの2つについて、具体的に見積もってみます。

4: 段階的導入戦略を考える
トレーシングに関わらず、新しい技術やツールの導入には、「社内規約やコストにより、SaaSの導入に時間がかかる」、「影響範囲や導入工数が見えづらく、導入が進まない」などのブロッカーが存在します。
このステップでは、我々が直面したこのような課題に対するアプローチについて考えてみます。

5: 合意形成に臨む
ステップ4まで検討が完了すれば、あとは関係者との合意形成を残すのみです。
弊社の組織構造を例に、合意形成に至るまでの作戦についてお話しします。

■ 対象

・前提知識:分散システム、可観測性に対する基本的な理解
・対象レベル:中級者向け
・プライマリターゲット:SREエンジニア、インフラエンジニア
・セカンダリターゲット:技術リードやマネージャー、CTOレベルの方

■ 得られるもの

・可観測性向上をビジネス価値につなげる具体例
・プロジェクトの成熟度に応じた段階的導入戦略
・経営陣との合意形成に使える具体例

■ なぜこのトピックについて話したいのか(モチベーション)

「技術的関心から○○を導入したいけど、お金を出してもらうためには経営陣(決裁者)の承認が必要…。でも、どのように納得していただくか…。」という経験をされたエンジニアの方々は多いのではないでしょうか。
我々も今まさに、トレーシングの導入に至る合意形成で奮闘中です。
SRE Kaigiを通じて、分散トレースに限らず、新たな技術・ツールを導入したい場合の提案手法の例を共有し、参加者の皆様から様々なご意見をいただきたいと思っています。