■ 発表カテゴリ
・Practices: SREの実践例と得られた教訓
・Architecture: SREの視点からのシステム設計
■ 発表概要(400字程度)
クレジットカード決済を扱う企業に要求されるPCI DSSというセキュリティ基準をご存知でしょうか。年1回の更新審査、監査ログのレビュー、多段の承認フローなど、厳格なコンプライアンス要件が課されます。
当社では、私たちSREがこれらの監査対応と準拠環境の運用を担当しています。監査証跡の取得やログレビューを手作業で対応すれば、SREが疲弊することになります。
私たちはこの課題に対して、SRE自身の運用負荷を最小化しつつ、セキュリティ要件をインフラ基盤で吸収するアプローチを取りました。AWSアカウント分離によるスコープ最小化、ECS FargateやCognitoなどマネージドサービスのフル活用、CI/CDへのセキュリティチェック組み込みなど、基本的なセキュリティ対策の積み重ねにより、開発速度を損なわずに堅牢なインフラ基盤を構築しています。
本セッションでは、当社のAI家計簿サービスでのSRE実践を通じて、クレジットカード決済基盤で実践してきた具体的なアプローチを共有します。PCI DSSという厳格な制約から学んだ、セキュリティ要件を設計要素として扱うインフラ設計の考え方を紹介します。
■ 発表の詳細(1000字程度)
クレジットカード決済を扱う当社では、PCI DSS準拠が事業継続の必須要件です。年1回の更新審査では、審査月の1ヶ月は対応にかかりきりになります。監査ログのレビュー、承認フロー管理、監査証跡の収集など、SREが担う作業は多岐にわたります。
本セッションでは、私たちが実践してきた「セキュリティ要件をインフラ基盤で吸収する」アプローチを共有します。マネージドサービスの活用、自動化の徹底、環境分離によるスコープ最小化などにより、SRE自身の運用負荷を最小化しつつ堅牢なインフラ基盤を構築してきた方法をお話しします。
具体的な内容については以下を想定しております。
スコープの最小化
マネージドサービスの活用
自動化の徹底
■ 対象聴衆とその人たちが得られるもの
■ なぜこのトピックについて話したいのか(モチベーション)
私自身、FinTechスタートアップに入社するまでは「厳格なコンプライアンスに準拠したサービスのインフラってどんなものなんだろう。ガチガチで身動きが取れないんじゃないかな」と考えていました。
PCI DSSのような厳格な規制への対応は、たしかに企業に大きな負担をもたらします。しかし、適切なインフラ設計と自動化によってその影響を最小限に抑え、SRE自身の運用負荷を削減しつつセキュリティ向上を実現できることが分かってきました。それは自分が他業界のSREとしてやってきたものと同様の、基本的な取り組みの積み重ねによるものでした。
私たちがやっている日常的な業務は一般的なWebアプリケーション開発でも応用可能なプラクティスだと考えています。「コンプライアンス対応は特別なことではなく、SREの日常的な活動で実現できる」という視点を通じて、コンプライアンス対応やサービスのセキュリティレベル向上に取り組んでいる皆さんの実践を後押しできれば嬉しいです。