■ 発表カテゴリ
・Culture: SRE文化の醸成と組織変革
■ 発表概要(400字程度)
本セッションでは2つの側面から SRE の可能性を広げるための話をします。
1つ目はスタートアップのサイズ感だからこそ経験できた SRE と事業の接続の結びつけ方、SREならではの事業貢献、その伝え方について話し、SRE の事業上の可能性を広げます。
2つ目はVertical SaaS(特定の市場に特化した SaaS)で求められる特殊な要求事項などについて話し、Vertical SaaS ならではの特殊要件について話し、SRE の活躍の可能性を広げます。
■ 発表の詳細(1000字程度)
スタートアップから見る SRE の事業貢献
スタートアップではリソース制約とスピード重視が前提となり、SRE は単なる信頼性確保にとどまらず「事業にどう貢献するか」が常に問われます。
本セッションでは、全体を見渡しやすいスタートアップだからこそ見えてきた SRE と事業の接点を扱います。具体的には分かりやすい差別化要素の一つである動作の軽快さを守るため、データ量の異なる顧客企業ごとの速度測定を行い、一部顧客企業の満足度低下を未然に防いだ取り組みや、例外エラーのみならずバリデーションエラーの観測と設計改善を通じてデザインチームと協業し、煩雑な業務システムを使いやすくした事例、そしてそれをブランディングや商談に活かしていく働きを紹介します。
さらに、事業貢献を加速するためにエンジニアが事業構造と顧客理解を能動的に深める姿勢を重視し、顕在化した問題の解消にとどまらず、より良い将来像を提示して SRE 活動を社内に定着させていくコツを述べます。
加えて、外部 SRE の知見を段階的に取り込むことで、問題分析→改善→社内勉強会へと接続し、文化醸成につなげた事例から、スタートアップならではの組織づくりと事業接続のあり方を話していきます。
Vertical SaaS ならではの SRE の活躍
業界に特化した Vertical SaaS では、SRE の評価単位が「個人」ではなく「企業」になります。影響ユーザ 0.1% の障害でも、ある顧客企業の従業員であればある顧客企業からの評価低下として跳ね返ります。また Vertical SaaS は特定の業界に顧客を絞るため、ある企業の小さな不満が業界全体に広まることもありえます。さらに toB という特性上、何か合った場合の説明も求められるため、ログ保存や原因解明により一層力を注ぐ必要があります。
また単一プロダクト内に、厳密な整合性を要する会計、同時接続やリアルタイム性が求められるチャット、大量送信を扱うメール一括配信 CRM などの要件が一つのプロダクトに併存し、一般的なサービスでは扱わないほどの幅広い知識が求められます。
ここに婚礼業界特有の事情が重なります。式場の休館日に合わせたデプロイ設計や地域ごとに文化が異なる婚礼業界の需要を満たすためのアーキテクチャ設計、個別異なる顧客環境を模倣したステージングでの個別検証を実施。
さらに B2B2C の特性上、何か合った場合もつねに式場さんの向こうにいるカップルさんを意識した慎重な立ち回りが必要です。
■ 対象聴衆とその人たちが得られるもの
スタートアップや Vertical SaaS で SRE の価値を事業につなげたい人、SRE と事業の接続に関心のあるソフトウェアエンジニアなど。
■ なぜこのトピックについて話したいのか(モチベーション)
SRE を「事業の価値」と結びつけることは現場で最も難しいテーマの一つです。大規模サービスやインフラ主導の組織とは異なり、スタートアップや特定業界に特化した SaaS では、SRE 活動が「贅沢」に見えがちです。そこで私は、SRE 的取り組みを 事業成長へ接続し、組織に根付かせる 方法を日々探ってきました。また婚礼業界に特化した SaaS で求められる SRE 像についても楽しめるかと思います。
本セッションを通じて、SRE が大規模サービスだけのものではなく、SRE が多様な事業で価値を直接生む取り組みであることを共有し、SRE の可能性を広げたいと思います。