もっとSREの裾野を広げるための初学者向け技術研修設計 by Kento Someya

SRE Kaigi 2025
採択
2025/01/26 12:05〜
ルーム A
セッション(30分)

もっとSREの裾野を広げるための初学者向け技術研修設計

kesompochy Kento Someya kesompochy
2

■ 発表カテゴリ

・Culture: SRE文化の醸成と組織変革

■ 発表概要(400字程度)

人間は、高いスキルを持って生まれるわけではありません。ソフトウェア技術者としてキャリアを始める人たちは人間です。そのため、ソフトウェア技術者が高いスキルを持つに至るには鍛錬や教育が必要です。
SREという領域においても同様です。何もせずに高い技術力を持ったSREが生えてくるならばどんなによかったでしょうか。

このセッションでは、技術組織における効果的なSRE研修の設計・実施方法を議論します。特に新卒エンジニアに向けた研修に焦点をあてながら、私が実際に提供したSREに関する技術研修の内容とその結果を紹介します。また、新卒エンジニアとしてSREロールを与えられた話者の視点から、SREの知識や技能を習得するにあたって有用だったことと苦痛だったことを説明しながら、初学者に対してSREの思想を導入するための設計アイデアを議論します。

■ 発表の詳細(1000字程度)

このセッションでは、SREの知識と技能を初学者に効率的に導入するためのアイデアについて、私が実施に関わった研修の内容と結果に触れながら紹介していきます。

まず、現代のWebサービスの運用におけるSRE技術の重要性を確かめます。組織の形態によってSREの実践のされ方は異なるにせよ、特定のメンバーのみがSREというロールを担うのではなく、組織として技術者全員がSREの文化を理解している状態であることの有用性を議論します。

そして、SREに関する知識技能の習得に向けてとりうる方法を説明します。現状広く利用可能である教材と、私が関わった研修を紹介します。教材については複数の技術書やワークショップに触れながら、初学者にとってどこが躓きポイントであるかを解説します。研修については、Kubernetesで動くアプリケーションをGitHub ActionsとArgo CDでデプロイできるようになるための「コンテナ研修」や、Grafana + OpenTelemetryの技術スタックを使って監視と可観測性を中心にSREプラクティスの習得を目指した「オブザーバビリティ研修」、またWebサービスのパフォーマンスチューニングを複数社合同の競技形式で実施した研修を紹介します。この項では、研修の設計意図や詳細な内容を説明します。また、研修受講者からのフィードバックによって得られた、研修の質を向上させるためのポイント(すなわち失敗事例)を共有します。失敗事例は、前提となる知識や技能の共有不足によって受講者に不完全燃焼感を抱かせてしまった事例や、内容量に対する研修期間の見積もりを失敗した事例などを含みます。

最後に、まとめとして、新卒SREエンジニアとして社会に組み込まれた経験を持つ話者の視点から、「もっとSREの裾野を広げる」ために私たちが取りうるアクションアイデアを議論します。SREという簡単ではない思想を、特に初学者に対して定着させるための方法論、コミュニケーションデザインの観点から作り上げるアイデアと実践例を提供します。

■ 対象聴衆とその人たちが得られるもの

このセッションは新規メンバーを迎えうるSREエンジニアや、SREを目指すエンジニア、また技術組織における研修担当者を対象としています。聴衆はこのセッションによって、ソフトウェアエンジニアリングにおけるSRE思想を導入することの重要性を改めて認識するとともに、研修や教育といった観点からSRE思想をもっと広く導入・定着させるためのアイデアを得られるでしょう。

■ なぜこのトピックについて話したいのか(モチベーション)

SREの技術や考え方はWebサービスの継続的な提供において技術的に重要な役割を担います。しかし、私自身の経験から、初学者にとってSREの知識や技能の習得のための間口が十分には整備されていないと感じています。

私は新卒エンジニアとしてSREロールに配属されました。自身で学び、実務に携わる中で、SREの価値と難しさを身をもって体験しました。さらに、その経験を活かして研修の設計と提供にも携わることで、「教える側」と「学ぶ側」の両方の視点を獲得しました。

新卒SREエンジニアとして実務に従事しながら研修に関わってきた経験を基に、SRE思想の導入のための効果的な教育デザインを体系化し、共有することがこのセッションの目的です。SREの裾野を広げ、より多くの技術者がSREの価値を理解し実践できるようになることで、業界全体のサービス品質向上に貢献したいと考えています。