放置されていたエラー通知を開発チームが一丸となって取り組めるような文化の醸成を行った話 by doriven

SRE Kaigi 2025
セッション(30分)

放置されていたエラー通知を開発チームが一丸となって取り組めるような文化の醸成を行った話

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■ 発表カテゴリ

  • Culture: SRE文化の醸成と組織変革
  • Case Studies: 実際の導入事例や失敗談

■ 発表概要(400字程度)

MOSH株式会社(以降MOSH)は監視SaaSとしてSentryを採用していて、フロントエンド・バックエンド両方でエラーが発生するとSlackに通知される仕組みになっている。
しかしMOSHのSentryのエラーはまったく整理されていないため狼少年化していたことやSentryが起票したエラーのトリアージを1人しか行っていない状態だったため様々な課題を抱えていた。
エラー通知の対応体制が弱いとバグによってプロダクトに障害が発生していたりUXが悪化していることに気付くことが出来ずに改善のサイクルを回せないといった状況に陥ってしまう。
この状況になっていることを組織課題として捉え、現在進行形でエンジニア全体でエラー対応を行えるように様々な取り組みを行っている。
本稿では課題があるエラーの対応体制から様々な取り組みを行ってチームの意識を引き上げ文化を醸成していった方法や投稿者が得た知見について話をする。

■ 発表の詳細(1000字程度)

◯ 背景

MOSHは「情熱をめぐる経済をつくる」をミッションにクリエイターがWeb上に店舗を作成し、スケジュールのマッチングやスキル・コンテンツの販売、会員向けページなどを提供しているWebサービスである。
MOSHではフロントエンド・バックエンド共にエラーの監視をSentryというエラー監視SaaSを通して行っていて、エラーのIssueが発生すると全てSlackのエラーチャンネルに通知される仕組みになっている。

◯ 現状

以下のような状況でその人が対応してくれているので他の人は完全に任せきりな状態になっていた。

  • 通知されたエラーの詳細を確認する人が1人だけ
  • エラーの対応についてどのような意思決定が行われたかが分からない
  • 機能開発チームが発生したエラーに気付くのはその人にメンションがされた場合がほとんど
  • 現状のシステムがSentryのグルーピングにうまくマッチせず似たようなエラーが通知される

◯ 課題

上記の状態から投稿者は以下を課題として捉えた。

  • 対応する人が1名のみでバス係数が低い
  • どのような意思決定を行ったかが分からないので判断の妥当性を検証できず、引き継ぎも難しい
  • MOSHが目指しているフルサイクルな開発に反し、機能開発チームが監視・エラー対応に対する意識が低く改善するサイクルを回せていない
  • エラーが狼少年化しているのでエラーへの関心度が低くなってしまっている

◯ 取り組み

現状の課題を受けて以下のような取り組みを現在も行っている最中である。

  • 開発チーム全員の時間を取ってエラーを確認する会を設けて全員でエラーを確認する
  • エラーを確認のうえで対応するチームをアサインし改善する動きを促進する
  • 転職したばかりの筆者でもエラー対応を行えることを見せることで、エラー対応の心理的ハードルを下げる
  • エラーのグルーピングを行うことで似たようなエラーが通知されない状況を作る

当日の発表でエラー確認会を通して得た知見・失敗談・改善する取り組みなどについて深堀りをおこなったり、開発チーム全体にエラーを確認して修正する文化をどのように作ろうとしたかの話をする。

■ 対象聴衆とその人たちが得られるもの

対象聴衆

  • エラーが放置されている状況を改善したいがどのように対応してよいか分からない人
  • 特定人物ばかりがエラー対応をしている状況に危機感を覚えている人
  • 開発だけでなく監視・エラー対応も行うフルサイクルな開発組織文化を作りたい人

得られる知見

  • 開発チームにエラーへの関心を持ってもらうためにどのようなアプローチをすればいいかの1つのパターンを学べる
  • エラー対応がされないチーム状況に対して仮説を立てて施策を行い、どのように文化を醸成させるかの改善のサイクルを学ぶ

■ なぜこのトピックについて話したいのか(モチベーション)

MOSH内での事例を紹介して文化の醸成をする手法について聴衆の方に感じ取ってもらえるものがあれば嬉しいと思いがあります。
また文化の醸成は難しく今ある組織の文化によってアプローチする手段は仕組みで対応するドライな方法から個々人に焦点を当てて響く言動を投げかけるウェットな手法まで様々な幅があると考えています。
Ask the Speaker中に議論や意見交換を行うことでそれぞれの組織の背景を理解し、どのような手法が効果的だったのかを知ることでお互いにより良い方法を発見して改善できる場に出来ればと良いな思っています。