こうして僕たちはSREをはじめた - ドキュメントからはじまったSRE開始までの道のり - by 前川博志

SRE Kaigi 2025
セッション(30分)

こうして僕たちはSREをはじめた - ドキュメントからはじまったSRE開始までの道のり -

前川博志

■ 発表カテゴリ
募集要項( https://www.notion.so/srekaigi/SRE-Kaigi-2025-CfP-0939fcd968a74bddaebdbf638a957ab9 ) にある6つの発表カテゴリからお選びください

・Culture: SRE文化の醸成と組織変革

■ 発表概要(400字程度)
「AWSをちゃんと使ってほしい!」
そういった思いでガイドラインをぶち上げた私達は、それが広まらないことに焦燥感と危機感を感じていました。最新のAWSサービスに対応してガイドラインを積極的に構築したり、ガイドラインに従った参照実装をテンプレートとして整備したり、使えるものにしようと努力は続けていましたが、それは利用者を省みない、独りよがりな活動になりかけていました。
利用者や利用者候補から積極的にフィードバックをもらい、開発の現場に入り込んでサポートする、そういった活動を通じて、なんとか利用者に向き合った活動として実を結びつつあります。
本発表では、私達のSREに向き合うに至った活動をふりかえり、大企業にSRE文化を醸成していく1事例をお話します。

■ 発表の詳細(1000字程度)
ダイキン工業では、ダイキン情報技術大学(DICT)という社内大学の取り組みを中心に、ITエンジニアを育成・教育し、空調機器を活用したソリューションの構築を効率的に実現すべく活動しています。
私達のチームは研究開発部門であるテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)に所属し、それらのチームがAWSを始めとしたインフラ基盤を活用していくため、基盤を運用やルールの策定を行いながら、個別の開発テーマに伴走してサポートを行う、プラットフォーム + イネイブリングのSRE体制を実行しています。

しかし、この形に行き着くまでには様々な試行錯誤がありました。

始まりは、部内のAWS知識が偏在していることに危機感を覚え、他社事例を参考にガイドラインを作成したところからでした。
半年ほどかけてガイドラインを書き上げた時、達成感とともに手元にあったのは、200ページを超える詳細なガイドラインでした。
社内に展開したものの、「果たして何人がこれを読んでくれるのだろうか?」と自問しはじめたとき…、次に”ガイドラインを読まなくてもデプロイしたら作れるAWSのテンプレート"を作り始めてしまいました。

…こうして重厚長大なドキュメントとテンプレートが整備されましたが、相変わらずそれらは「そこにあるだけ」の状態。作っただけの文字通りの「負債」となりかけています。

ようやくこれでは駄目だ、と危機感を覚え、ようやく社内の他の開発チームについてヒアリングを始めます。
幸いにして、AWSガイドライン自体は有用と受け入れてもらう声が多かったものの、レベル感があっていない記載も多く確認されました。
テンプレートも置いておくだけではなく、実際に使ってもらえるように自分たちで困っているチームに声をかけ、チームで入り込んて実装をサポート。結果的にプロジェクト自体を成功させるとともに、社内ルールにうまく合わせるためのフィードバックを得ることに成功しました。

何かを作って終わりではなく、それを活用していく仕組みそのものを回していく。その活用が必要だと気づいた時が、私達が「SREをはじめた」時だったのかと思います。

それ以降、Githubやセキュリティについてもガイドラインやルールを策定しましたが、それを開発チームが自然に守れるような仕組みをつくり、構築した仕組みを実際に利用してもらいフィードバックを受ける流れが生まれ、SREとしての活動が回り始めました。

こういった我々の試行錯誤のジャーニーを、SRE Kaigiの場で共有したいと思います。

■ 対象聴衆とその人たちが得られるもの
システム開発が本業ではない、製造系の大企業において、SRE文化を始めた1事例を知ることで、特に大企業の方が自組織にSREを根付かさせていく一つの助けになれればと考えています。

■ なぜこのトピックについて話したいのか(モチベーション)
もともと頭でっかちに活動を始めてからおよそ2年。技術的に拘泥しがちだったチームがようやく組織全体を見据えて動けるようになってきました。この体験は自分の中で大きなチームの成長物語であり、1チームの事例で留めるのではなく、広く共有しフィードバックをもらっていきたいと考えています。