近年、カンファレンスや書籍を通じて多様なソフトウェア設計の手法が広まり、私たちの選択肢はますます多くなっています。
しかし、リソースは有限です。すべてを全力で完璧に作り込むことは難しい場合もあります。
「どこに力を注ぐか」を見極めることも重要です。
事業の競争優位を支える核心領域には積極的に投資し、それ以外はあえて“手軽に”抑える。
判断を誤れば、逆に設計に振り回されて事業価値に結びつかないコストばかりが膨らんでしまう危険もあります。
ドメイン駆動設計の著者であるEric Evansはかつて、「最も才能がある人をコアドメインに割り当てること」と述べています。
そして現在では、メンバーの技術力やドメイン知識、内製・外注という判断軸に加え、"AI"という選択肢も広がっています。
これらの判断はどのように見極めればよいのでしょうか。
さらに近年では、コードや機能の「捨てやすさ」も注目されています。
手軽に「作る」だけでなく、手軽に「捨てる」ことも重要となってきました。
本セッションでは事業理解を基盤に設計・コーディングの「力の入れどころ」や「捨てやすさのデザイン」をどう考えるかをお話しします。
Kent Beckが提唱する"Optionality"などに触れながら、設計投資にメリハリをつける視点を紹介します。
また、私自身も過去に設計に投資しすぎてかえって無駄な複雑性を増やしてしまった失敗を経験してきました。
こうした自身の過去の失敗例も交え、理論と実践の両面から学びをお届けできればと思います。
事業価値を見据えつつ、どこに投資し、そしてどう捨てるか。
このセッションを通じて、その判断を明日から少し“手軽に”行えるようになるヒントを持ち帰っていただければ幸いです。