ソフトウェアを作る仕事は労苦以外の何物でもありません。
労苦は、複雑な世界に向けて使いやすい道具を作るという仕事の本質的な難しさに起因していて、技術や手法を洗練すれば除去できるものではありません。
アジャイルにすれば楽になると思いきや、開発にまつわる周辺的な複雑さが緩和されることによって、役に立つモノを作ること自体に内在する難しさが却って際立ってきます。
我々は、何のために、労苦を甘受してソフトウェアを作るのでしょうか。
労苦を軽減することも大事ですが、労苦の意味を知ることはそれ以上に重要です。
自分たちが作るソフトウェアの存在意義が腑に落ちなければ、私たちはけっして労苦を乗り越えられず、真っ当なソフトウェアを創り得ないでしょう。
この基調講演では、その糸口として、ソフトウェア作りとは何か、どうして私たちはソフトウェアを作るのか、それを踏まえてソフトウェアをデザインするとはどういうことか、といったことがらについて、一緒に考えてみましょう。
我々の仕事には意味があります。