オブジェクト指向の父といわれるアラン・ケイは、オブジェクト同士がメッセージを送り合うことによって全体システムが構成されると述べました。しかし、メッセージパッシングとメソッドコールは混同されることも多く、オブジェクトがメッセージを解釈して自律的に振る舞うという本来の意味が忘れられてしまうことも少なくありません。
本セッションでは、自律的に振る舞う車両エージェントとそれによる交通シミュレーションシステムを例にとり、メッセージベースのオブジェクト指向について再度焦点をあてます。各車両エージェントが道路網情報や交通状況に応じて自律的に振る舞い、場合によっては他の車両や交通設備へメッセージを送ることをシステムとして実現しシミュレーションします。
アラン・ケイにとっては(妥協とも言える)実装上の工夫にすぎなかったメソッドという概念が、抽象データ型を中心概念とするオブジェクト指向にとってはそれ自体がオブジェクト間のインタラクションにおける主要概念となっていることについて考察し、そのうえで、メッセージとメソッドの違い、メッセージレシーバーとしてのオブジェクトのあり方についても議論を深めていければと思います。