iPhoneで海難事故は防げるか?年間2000件の事故に挑むアプリ開発 by 瀬尾 敦生

iOSDC Japan 2025
レギュラートーク(20分)

iPhoneで海難事故は防げるか?年間2000件の事故に挑むアプリ開発

atsuki_seo 瀬尾 敦生 atsuki_seo
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AIS(自動船舶識別装置)の非搭載などを理由に、小型船舶の海難事故は毎年2000件以上も発生しています
この長年の課題を解決するため、我々は2015年からiPhoneを用いた事故防止アプリの開発に取り組んできました
本発表は現在国立高専の教員兼iOSエンジニアである発表者が、過去数年間の開発で直面した技術的課題や法的な課題と、それらを現代のiOS技術やSwiftでいかに解決できるか説明するためのテーマです

本発表では最初に各開発フェーズでの実施内容と課題に関してお話します

  • Phase 1 (2015-2016):
    • プロトタイプをiOSアプリとWebViewで開発
    • 他船との接近判定時のパフォーマンス問題
    • 電波法59条の抵触に関する問題
  • Phase 2 (2017-):
    • フルネイティブアプリ対応、Apple Watch連携
    • 海上での電波利用状況の調査、操船中に通知へ確実に気づくためのUI/UXの設定と検証
    • 他船の位置情報提供・管理に関するプライバシー問題

次に本セッションでは、国土交通省から現在出ている安全航行支援アプリのガイドラインとUIのイメージ・注意点に関して説明します

  • 例)GPS誤差を考慮した船の接近警告の判定と表示方法
  • 例)通信不能時の判定と表示方法

最後にはパフォーマンス、UI/UXといった課題に対し、現在のiOSが提供する技術(SwiftUI、Swift Concurrency、Watch Complicationなど)を駆使してどのようにアプローチできるかを解説します
位置情報を利用した接近検知機能を持つアプリの実装方法と今まで発生してきた課題、当時の様々な実験結果を共有することで、船に限らずリアルタイムな位置情報処理に取り組む方々に知見を提供することを目指します