Appleプラットフォームのファイル共有にはSMBプロトコルが利用されています。しかし、ファイルが非常に多いフォルダを開く際に接続が不安定になるなどの問題があります。OSに含まれるライブラリの不具合なので対処は難しいですが、SMBファイル共有を自分で実装すれば問題を根本的に解決でき、快適なファイルブラウジングが実現できます。
SMBファイル共有を実装すると一口に言っても何から始めたらいいかわからない方も多いでしょう。SMBプロトコルはHTTP通信ではなく、URLSessionは使えません。データ構造もJSONなどのなじみのある形式ではありません。
難しそうですが、実は道具が違うだけで通信はHTTPではなくTCPソケットを、データ構造はJSONのデコード/エンコードのかわりにバイナリのシリアライズ/デシリアライズを用いるだけです。TCPソケット通信を理解すると、Bitcoinやメールなど、他の通信プロトコルの実装にも簡単に応用できます。
この講演ではSwiftでTCPソケット通信を行う場合の複数の選択肢の比較、プロトコルに従ったバイナリのシリアライズ/デシリアライズの方法など、SMBクライアントを実装する手順について解説します。最終的にiOSとmacOSの両方で動作し、音楽や動画ファイルをストリーミング再生できる、速くて使いやすいネットワークファイルブラウザを作成します。