人工知能技術の発展により、端末による物体の判別や自然言語処理など、iOSの様々な可能性が広がってきました。これらのうちほとんどは、現在隆盛のディープラーニング技術をベースにしています。しかしながら、このようなディープラーニングベースの人工知能はあくまで「ツール」としての人工知能です。ヒトの知能のもっとも高度な部分は大脳が担っていますが、大脳が扱う「意識」は、例えば夢を見ているときのように入力が出力が無くても自発的な活動を続けています。むしろ、大脳への入力や出力は、そのとてつもなく高度な機能の本質ではないのかもしれません。また、ディープラーニングは出力に対応する正解が必要な教師あり学習ですが、高度な自律性、汎用性を有する実際の大脳では正解データのない教師なし学習が行われています。より自律的、より汎用的な人工知能をiOSアプリが搭載するためには、このようなより天然の知能に近い仕組みをアプリが備える必要があります。
そのために、本発表ではアプリが「意識」を備えるためには何が必要なのか、様々な可能性を示していきます。脳科学と人工知能の関係性から始めて、単純なルールから一筋縄ではいかない複雑な因果関係が生まれるカオスや複雑系、さらに意識を扱う理論である統合情報理論、グローバル・ワークスペース理論などを解説していきます。その上で、自律的な動作をする「意識のようなもの」へつながるアルゴリズムを探っていきます。
果たして、スマートフォンはヒトにとって単なる「ツール」であり続けるのでしょうか、それとも、ドラえもんのようなヒトにとって大事な「パートナー」になるのでしょうか。本発表では、従来の「ツール」として有用なディープラーニングを離れて、生き物のような自律性を持つ「パートナー」としての人工知能の可能性を探求します。