Google Cloud Community Tech Surge 2026 presented by Jagu'e'r
公募セッション(30分)
配信会場(東京)

ハルシネーションを防ぐ。BigQuery×セマンティックレイヤ×MCPで構築するAI基盤

古畑 和輝

◻︎セッション概要(500文字以内)
「データはBigQueryにあるが、定義が曖昧でAIが誤答する」。
これはAIエージェント時代の致命的なリスクです。
人間は文脈で補完できますが、AIには厳密な意味(Semantics)の定義が不可欠です。

本セッションでは、BigQueryを計算エンジン、Lookerを意味の定義層、Vertex AIを推論エンジンとして統合するアーキテクチャを解説します。
単なるText-to-SQLではなく、Model Context Protocol (MCP) や Conversational Analytics API を活用し、AIがビジネスロジックに基づいて自律的かつ安全にデータを取得するデータ基盤の構築論。
ガバナンスとパフォーマンス(キャッシュ/コスト)の実装詳細まで、エンジニアリング視点で解説します。

◻︎想定オーディエンス・得られる学び(500文字以内)
【想定オーディエンス】
・生成AI (RAG/Agent) のハルシネーションや数字の不整合に悩むアーキテクト
・BigQuery上のデータをAIエージェントに安全に供給したいデータエンジニア
・Looker / LookML のモダンな活用法(MCP等)を知りたいTech Lead

【得られる学び】
・AIの「嘘」を防ぐための、LookMLによるセマンティックレイヤ(意味定義層)の設計思想
・Model Context Protocol (MCP) や Conversational Analytics API を用いた接続実装パターン
・BigQueryのコスト爆発を防ぐキャッシュ戦略とAggregate Awareness(集計認識)
・ガバナンスをコードで担保する基盤構築

◻︎セッション詳細(1000文字程度)
■ The Context:AIエージェントは「曖昧さ」に耐えられない
2026年に向けたデータ戦略の主役は「人間のアナリスト」から「自律型AIエージェント」へ移行します。
しかし、多くの組織でKPIの定義はBIツールの計算フィールドや個人のクエリに分散しており、これがAIのハルシネーションを引き起こす根本原因となっています。
本セッションでは、「ダッシュボード」ではなく、AIのための「信頼できるコンテキスト供給源」としてセマンティックレイヤを再定義します。

■ The Architecture:BigQuery × Looker × Vertex AI Google Cloudエコシステムにおける、役割を純化した3層アーキテクチャを解説します。

・Compute (BigQuery): ロジックを持たず、高速な実行エンジンに徹する。
・Semantics (Looker/LookML): ビジネスロジック、結合ルール、指標定義を一元管理し、API経由で提供する。
・Reasoning (Vertex AI): 定義された指標(Tool)を使って推論し、アクションを行う。

■ The Implementation (Deep Dive):MCPとAPIによる接続
概念論だけでなく、具体的な実装パターンに踏み込みます。

Model Context Protocol (MCP) の衝撃: 2024-25年のトレンドであるMCP ServerとしてのLooker活用。
ClaudeやGeminiなどのLLMから、標準化されたプロトコルでセマンティックモデルに接続し、安全に社内データを取得する仕組み。

Conversational Analytics API & Agent Builder: Vertex AI Agent Builderにおいて、Lookerを「Tool」として登録し、自然言語から正確な指標(Metrics)を引き出すための実装フロー。Text-to-SQLの危険性を回避し、検証済みのロジックのみを実行させる設計。

■ The Reality:泥臭いエンジニアリングの壁 AIエージェントの実運用で直面する課題への解を共有します。

パフォーマンスとコスト: AIは人間よりも頻繁にクエリを投げる。
BigQueryの意図しない高額課金を防ぎ、数秒以内のレスポンスを返すための「Aggregate Awareness(集計認識機能)」とキャッシュ戦略。

ガバナンスの強制: プロンプトインジェクションへの対策。
AI経由のアクセスであっても、行レベルセキュリティ(RLS)を強制し、ユーザー権限に応じたデータのみを返す仕組み。

■ Conclusion
「意味」を持たないデータ基盤は、AI時代において負債となります。
LookMLで組織の「横串」を通し、データを真にアクション可能な資産へと変えるためのエンジニアリング手法をお伝えします。