Day1からVPoEやEMとして組織に参画すると、過去の経験から改善点が多く見えます。しかし、新しい組織ではその課題の優先度や背景が見えず、的外れな判断につながるリスクがあります。私自身、100名規模の組織にVPoEとしてジョインした際、期待と同時に「お手並み拝見」の空気を感じつつ、正しく立ち上がる難しさに直面しました。
参画直後は改善したい点が次々見えましたが、後に『エンジニアリング統括責任者の手引き』を読み返すと、背景理解が浅いまま“正しそうに見える解”へ動こうとした瞬間があったと反省しています。当時、その状態を改善すべくREADME of VPoEを公開し、責務やスタンス、CTOとの関係性(相互補完性と冗長性)を明示しました。さらに、メンバー一人ひとりと業務・趣味の両面で接点をつくり、相談しやすい関係性を早期に育てました。またCTO・CPO・VPoP・VPoEで毎朝プロダクト開発や組織に関する情報を連携し、感じた課題を相互検証する取り組みも、感じた課題の背景や優先度を毎日適切に検証し、偏った情報での組織判断を避けることに有用だったと振り返ります。
こうした実践から、新任者の最初の期間をすぐ成果を出す期間ではなく、見えていない背景を共有し、中長期で活躍するための組織診断力を備える期間として位置づけました。本セッションでは、パラシュート的に参画するVPoEやEMが組織と協働で立ち上がるためのオンボーディング設計を紹介します。