Engineering Managerの責務とマネジメントは、Product・Technology・Process・Peopleを代表する多様な領域に及び、その範囲は「広く」、そして「深い」ものです。多くの組織では、この全領域を一人で高い水準でリードできる「超人EM」が暗黙の理想となり、個人への負荷や採用・育成の難易度を押し上げ、結果として事業成長に組織が追いつかなくなる「ひずみ」を招きます。
タイミーでも当初、EMの役割はPeople領域(目標設定、評価、育成)やProcess領域(開発プロセス最適化)が中心でした。しかし、課題を素早く深く捉えるには、顧客課題・業務知識・法要件を含むProduct領域や、設計・実装を含むTechnology領域への深い理解も欠かせません。結果として、一人のEMが広い領域を高水準で担い続けることの難しさに直面しました。
そこで私たちは「超人EM」を前提とせず、EMを各マネジメント領域を横断して状況を見立てる「診断医」として再定義しました。EMの本質的な役割は、自ら全てを担うのではなく、「チームとして全領域を実行できる状態」をつくるために、組織の課題と状態を診断し、不足するケイパビリティを補う設計を行うことにあります。
本セッションでは、この「診断医としてのEM」を機能させる組織デザイン、EM個々の強みを「組織のポートフォリオ」として相互補完して活かす仕組み、AIを用いて診断力を高める取り組み、そしてそれらを支えるキャリアラダーやコンピテンシー設計について紹介します。