フロントエンド開発の勘所 - 複数事業を経験して見えた判断軸の違い - by 久保 陽一郎

BuriKaigi 2026
採択
2026/01/10 16:30〜
Room 205/206
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フロントエンド開発の勘所 - 複数事業を経験して見えた判断軸の違い -

久保 陽一郎

本 LT では、toB と toC で求められるフロントエンドエンジニアリングの勘所の違いについて、実際の事業開発の現場で得た経験をもとに整理し、再現性のある学びとして共有します。
フロントエンドエンジニアは、UI 実装や技術選定だけでなくプロダクトの価値をユーザーに届けるための「最後の砦」としての役割を担います。しかし、その「価値」の定義は toB と toC で大きく異なります。toC では「多くのユーザーにどう魅力的に届けるか」が重視される一方で、toB では「限られたユーザーが日々の業務をいかに速く・正確にこなせるか」が価値の中心になります。
発表者はサイバーエージェントに新卒で入社し、フロントエンドエンジニアとして約 10 年間異なる性質を持つ複数の事業部で開発に携わってきました。
サイバーエージェントには大きく分けて以下の 3 つの事業領域があり、発表者はそのすべてに所属・関与した経験があります。

・ゲーム事業部
主に toC 向けのスマートフォンゲームを中心とした事業領域です。
フロントエンドとしては、ゲームのプロモーション用 LP の制作や、ゲーム内のお知らせ・イベント告知画面などを Web ページとして実装するケースが多くあります。特にゲーム内お知らせ画面などは緊急対応としてプランナー等非エンジニアが直接編集するケースなどもあります。
この領域では、短期間での大量リリースやキャンペーン単位での開発、タイトルごとのビジュアル的な細かいチューニングが求められるため、「スピード」「表現力」「運用のしやすさ」が重要になります。
多少の技術的負債よりも、ユーザー体験やタイミングを優先する判断が正解になる場面も多く、toC フロントエンド特有の意思決定が求められます。

・メディア事業部
ブログ、ニュース、動画配信サービスなど、Web を中心にプロダクトを展開する事業領域です。
SEO、パフォーマンス、アクセシビリティ、長期運用を前提とした設計などが重要になり、「作って終わり」ではなく「育て続けるフロントエンド」が求められます。
ユーザー数が非常に多いため、小さな実装ミスや設計判断がパフォーマンス低下や UX の悪化として顕在化しやすく、安定性と継続的改善のバランス感覚が重要になります。
その他にも動画配信の知識なども必要になるケースがあり、フロントエンドエンジニアとしては最も深い専門性を求められるかもしれません。

・広告事業部
インターネット広告配信を主軸としつつ、広告主や代理店向けの toB プロダクト(管理画面、分析ツール、運用支援ツールなど)を数多く手がけている事業領域です。
この領域のフロントエンドでは、見た目の派手さよりも堅牢性・拡張性・保守性・ドメイン理解に加え、使いやすさや作業工数の簡略化が強く求められます。
利用者は日常業務として長時間ツールを使い続けるため、UI のわずかな使いづらさや操作ステップの多さが直接的に業務コストの増加につながります。そのため、「正しく動く」だけでなく、「迷わず使える」「無駄な操作を減らす」ことがフロントエンドの重要な価値になります。

本 LT では、こうした前提をもとに、
・toB / toC でフロントエンドに期待される役割の違い
・技術選定や設計における「優先順位の変え方」
・UI / UX を考える際の視点の切り替え方
・事業が変わっても応用できるフロントエンドエンジニアの思考法
といった点を整理してお話しします。

特定のフレームワークやライブラリの解説に留まらず、「なぜその判断が必要だったのか」「別の事業だったらどう判断が変わるのか」という背景や考え方を共有することで、参加者が自身の現場に持ち帰って応用できる学びを提供することを目的としています。
toC プロダクトに携わっている方が toB 開発に関わる際の心構えとして、また toB プロダクトに携わる方が toC 的なスピード感や割り切りを理解するためのヒントとして、本 LT が役立つことを目指します。