Enum、お前は一体何者だ?複数言語で見る「列挙型」の多様な進化と使い方 by こうの

BuriKaigi 2026
レギュラー

Enum、お前は一体何者だ?複数言語で見る「列挙型」の多様な進化と使い方

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テーマ

4つの異なる言語・フレームワークにおける「列挙型(Enum)」の比較から学ぶ、設計思想の多様性と型安全性の未来

想定する参加者層(前提知識)

中級者以上を対象 (複数の言語のいずれかで開発経験があり、基本的な型システムやデータベース連携の概念を理解しているエンジニア)
Java、C#、Ruby、JavaScript(TypeScript)を想定しています。異なるコミュニティが集まるこの場所で、あえてすべての言語に共通する、そして最も設計思想の違いが表れる機能の一つ、「列挙型(Enum)」を徹底的に解剖します。

一見シンプルなEnumですが、その実装は言語の哲学そのものです。本セッションでは、この共通概念が各言語でどのように進化し、開発者にどのような設計上の恩恵と制約をもたらしているのかを、実用的なコード例を交えて比較・考察します。

トーク詳細

本トークでは次の内容について話を進めます。

  1. Enumとは一般的にどのようなものか?
  2. Enumはクラスか定数か
     2.1. JavaとC#でのEnumの比較
     2.2. 後発言語、PHPでの扱い
  3. ネイティブでEnumを持たない言語のアプローチ比較
     3.1. TypeScriptでのEnumの工夫
     3.2. Ruby on RailsでのEnumの使われ方
  4. 全体への洞察
     4.1. Enumの役割を改めて見直す
      4.1.1. 多値の表現力、振る舞いのカプセル化、永続化やリファクタリングといった観点からそれぞれのEnumについてまとめ直します
     4.2. 言語の思想への考察

Enumは「クラス」か「定数」か?

まず、JavaとC#という兄弟のような言語におけるEnumの根本的な違いを明確にします。

JavaのEnumはEnum定数がフィールドとコンストラクタを持つ「クラスインスタンス」です。これにより状態と振る舞いをカプセル化し、ポリモーフィズムを実現する設計哲学を解説します。

C#のEnumは「名前付きの整数定数」として扱います。拡張メソッドや[Flags]属性による実用的な拡張に焦点を当てます。

そして後発のPHPのEnumはJavaのメソッドとC#のバッキング値の良いところを取り入れ、特にDB連携を意識したモダンな設計になっている点を紹介します。

ネイティブでEnumを持たない言語のアプローチ比較

ネイティブでEnumを持たない言語が、いかにしてこの概念を取り込んだかを探ります。

TypeScriptのEnumは開発時の型安全性と、それがJavaScriptにトランスパイルされた際の挙動の危うさ(数値の型安全性の問題など)を示します。最近のJavaScriptへのネイティブEnum導入に関するTC39の議論にも触れ、この機能の未来を予測します。

一方、Ruby on Railsのenumは言語本体ではなく、フレームワーク(Rails)の機能としてDB連携に特化することで、生産性と利便性を極限まで高めたアプローチを考察します。静的型付けの世界では見られない、Rails特有の「規約の力」を強調します。

全体への洞察

最後に、これらの比較を通して得られる重要な知見を共有します。

多値の表現力としてJavaの複数のフィールド vs PHPの単一のバッキング値 vs TSの柔軟性。
振る舞いのカプセル化としてEnum自身にロジックを持たせるべきか、外側でswitchで分岐すべきか。
永続化とリファクタリングとしてDBに依存するRailsのenumと、依存しないJava/C#のEnum、どちらが長期的な保守性に優れるのか。
など、Enumを基準として各言語ごとにどのように「列挙型」と向き合っていくべきかを示します。

このセッションは、単なる機能紹介に留まらず、あなたの日常的なコーディングにおける「良い設計とは何か」「型安全性とは何か」という問いに、複数の視点から答えを与えます。他言語のEnumを知ることで、あなたのメイン言語のEnumが持つ強みと制約を再認識し、より深く、より保守性の高いコードを書くための新たな視点と熱意を持ち帰ってください。