単一のプロセスで並行処理を行う方法として、OSカーネル上でスレッドを大量に作成する代わりに、細切れにした「タスク」をユーザーランドで処理し続ける、いわゆる非同期ランタイムが使われることが増えてきています(例: goroutine、tokio-rs、Cats Effect、Project Loom)。アプリケーション内部に用意したスケジューラを用いて実行するタスクを切り替えていくこれらの機構は、使い方こそスレッドベースの非同期プログラミングと大差ない(場合によっては、同期プログラミングとも大差ない)ものの、そのランタイム実装まで追ったことのある方は多くないのではないでしょうか。
この講演の前半部分では、ラムダ計算から出発して、ラムダ計算のシンプルな「インタプリタ」であるCEK 機械の仕組みと動作について詳しく解説します。そして後半部分では、CEK 機械の仕組みを通して、非同期ランタイムの実装(の一パターン、特に Cats Effect 3 の実装)を理解できるのだと道案内することを目標とします。